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デイケア“アミーゴ”のプログラムには、SSTのグループが週に2グループあります。
SSTとは、他者とのコミュニケーションの技術を上げるべく、セッション場面での練習と、実生活での実践を重ねていくプログラムです。
2つのグループとも、“基本訓練モデル”という形式でのグループですが、大きく異なる点は、1つのグループの方には“ピアリーダー”がいる、ということです。
“ピア”という言葉には、“仲間”という意味があります。
“ピアサポート”“ピアカウンセリング”“ピアスタッフ”などのような言葉があり、精神疾患を持つ当事者として、“仲間”として、同じ精神疾患を持つ“仲間”を支える・支援するような活動に対して、“ピア”という言葉が使われます。
SSTでの“ピアリーダー”とは、“ピア”として、リーダー(SSTでのトレーニングを行なう人)の立場で参加している人、というものです。
その方はひろみさん(仮名)といいます。
ひろみさんは、20年以上前に統合失調症を発病し、かつて7年ほどの長期入院を他の病院でしていたこともある方です。
その後、デイケア“アミーゴ”に通所し始め、スタッフの誘いでSSTにメンバーとして参加するようになりました。
SSTでは、他者との友好的な会話の練習を主に行ない、練習したスキルを実生活で使うことも
積極的に行なっていらっしゃいました。
ある時点で、
<ひろみさんのスキルは生活の目標に関連する面では到達点まで行ったと思われるので、SSTはもう卒業する段階になったのでは>
とリーダー(スタッフ)間で話し合っていたところにちょうど、ご本人からも「SSTからの卒業を考えている」とお話がありました。
そこで、ひろみさんが今までSSTに参加してきて得てきたものを、他の参加者にも還元してもらいたい、ひろみさんにも新たな役割を担ってもらってのちの社会生活へのステップアップにもつなげてほしい、などのリーダー側の意図から、ひろみさんへピアリーダーとしての参加を打診したところ、ご本人も合意なさり、ピアリーダーとしての参加が新たに開始となりました。
ピアリーダーとしては、セッション中のメンバーの練習の中での相手役を務めたり、板書をしたり、ということを主に行なっていらっしゃいましたが、少し前から、セッション冒頭のウォーミングアップを主となって担当する役割が開始されました。
ウォーミングアップでは、簡単なゲームを、他者との交流が生じやすい形で行なっています。
以下は、ひろみさんにピアリーダーとしてSSTに参加していることについて、リーダーが尋ねたインタビューの内容です。
<ピアリーダーとして参加していて何か感じることは?>
「少しだけど、自分が向上したというか、そんな感じがします。今までできなかったこと、板書とか、練習の相手役になったりとか、ウォーミングアップの司会とか。ちょっとだけど自信につながってきたかな、と思います」
<ウォーミングアップの担当をすることについては?>
「最初はかなり苦痛で、今も苦痛だけど、はじめよりは苦痛は少なくなってきてます。最初は戸惑うばかりで。メンバーとして参加していた時はいろいろ説明できたことも、前に出て司会をすると説明できない。今は改善しなきゃいけない点もいろいろあるけど、こういうふうにやってみようかな、と前向きに考えるようになってきてます。ウォーミングアップだけは、立派まではいかないまでもやってみようと思ってます」
<ピアリーダーをやっていて何かメリットはありますか?>
「自分の自信を感じられると嬉しいんですよ。病気が長くなってきて自信がなくなってきちゃったところがあって。でもウォーミングアップの担当をして成長できると自信が出てきます」
ひろみさんは幻聴等の症状は今でも残存しています。また、時に生活上の別のことでストレスを感じて悩むこともあります。
しかし、その中でも役割をこなせています。
リーダーとしては、ピアリーダーとしての役割の負荷が、ひろみさんが今後調子を崩すほどの負荷にはならないように留意はしつつ、ひろみさんが自信について“リカバリー”することの手助けをしていきたい、と考えています。
アミーゴスタッフ一同
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