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精神科デイケア“アミーゴ”の活動の中では、通所しているメンバーが役割を担っているものが様々あります。
・朝・帰りのミーティングの司会
・レクリエーションプログラムの企画・司会進行
・SSTへのピアリーダー的立場での参加
・米研ぎ
・昼食前のテーブル拭き
・昼食の食器・鍋等の運搬
・昼食の盛り付け
・昼食の配膳
・昼食後の後片付け
・帰りのテーブル拭き
など、多くあります。
日本の精神科の歴史の中で、『使役』が問題となった過去がありますが、『使役』にはならないよう留意しつつ、通所メンバーには各役割を担ってもらっています。
その役割の中で、帰りのテーブル拭きの役割を担っている通所メンバーAさんについて、今回はスポットを当てて記事にさせていただくことにしました。
Aさんは通所すると毎回、帰りのテーブル拭きの役割を担っています。
以前その役割について私(スタッフ)が尋ねたところ、「スタッフに頼まれたから」と話していました。
Aさんが今日のテーブル拭きが終わって帰る前に、役割を担っていることについて改めてやり取りさせていただきました。Aさんは口数は多くはない方ですが、とつとつとにこやかに答えてくださいました。
<メンバー皆が使ったところを、Aさんが代表してテーブル拭きをしてくれている。テーブル拭きをするその動機はどこから来るのでしょうか?>
「…いつもやってるので」
<正直なところ、やめたいなと思うことはありませんか?>
「…ありますね」
<いつもやめたいなと思いながらやっているんですか?>
「そうではないですね」
<時にやめたいなと思うこともある、という感じですか?>
「はい」
<Aさんがテーブル拭きをして下さるのは助かっています。でもやめたいなと思う中やってもらうのも申し訳ないので、試しに一旦やめてみて、また期間が経った時にどうするか相談でもいいですよ>
「いや、やります」
というやり取りでした。
一般的に、役割を担うことには、
・社会(デイケアはそのひとつ)の中で役割を担えている、自分はその社会における一員なのだ、という、社会の中での自己の存在価値を感じられる体験となること
・自分が他の人の役に立てるということでの、他者との相互作用の中での自己の存在価値を感じられる体験となること
という意味合いがあると、私は感じています。
誰かにやらされる中や、嫌々やる中では、役割を担うことでのこのような意味を感じにくくなるだろう、逆に自分自身が自ら何かしらの意義を感じていれば、役割を担うことによっての意味がもたらされるだろう、と思われ、そのためAさんとは今回のやり取りをさせていただきました。
やり取りでは、役割をなぜ続けようと思ったか、などについては聞けていないところも残っています。
ただ、Aさんがこの役割を続けると自ら選んだことには、上記の役割を担うことの意義を何かしら感じているからなのでは、と私は期待を込めた解釈をしました。
Aさんが現在デイケアで担っている役割は、医療における小コミュニティーの中での役割ですが、ここでの役割体験が、のちに就労などデイケア外にシフトしていく中での、自身に力をもたらす経験のひとつとなってくれていたらいいな、と期待して、役割を担ってもらっています。
またそれはAさんだけでなく、デイケアでの役割を担っている全てのメンバーに通じるものとして、私は考えています。
精神科デイケア“アミーゴ”スタッフ
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