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スキルを“セールス”すること――SST

2021.9.11

精神科デイケア“アミーゴ”では、グループでのSSTが木曜金曜それぞれ別のグループとして行われています。

SSTとは、Social Skills Traningの頭文字を取ったもので、日本では『社会生活スキルトレーニング』という名称がついています。

“社会生活スキル”とは、“他者とやり取りするスキル”とほぼ同じ意味であり、それをトレーニングで向上させていくのが、SSTになります。

 

以下はコラムのような内容になっており、長文かつ、少々理屈っぽい内容となっているかとも思います。

そのため、SSTに興味関心のある方はぜひお読みいただき、SSTに興味関心のない方は流し読みしていただいて構いません。

 

“アミーゴ”のSSTのグループに参加しているデイケア通所メンバーは皆、自身の“社会生活スキル”を向上させたいと思っている方たちです。

例えば、他者に話し掛けて会話したいけどその話題が思いつかない、話題を増やしたい、という方

他者からの頼み事で気が進まないことを断りたいが上手く断れない、断ることができるようになりたい、という方

など、それぞれのメンバーごとに獲得・向上したいと考えているスキルは様々です。

 

多くはそのスキルが、精神的な安定に役立ったり、精神的な調子を崩すのを防ぐことに役立ったり、という効果があるため、精神科領域でSSTが行なわれています。

その方たちがSSTでスキルを獲得・向上する機会を持つことで、友人を得たい、就労したい、などの希望に近付きやすくなる、という、人生のステップを先に進めるために役立つ面もあります。

 

木曜のSSTグループ、金曜のSSTグループで、各2名のスタッフがトレーナーを担当しており、それぞれのグループで担当スタッフは異なりますが、グループごとの担当トレーナー間でグループ前後のミーティングを積み重ね、トレーナー側のスキルの向上につとめています。

 

ミーティングで下準備をすると、この方はこの社会生活スキルを身に着けるとよいだろう、とトレーナー側が考えるスキルが、グループ開始前に描かれることになります。

例えば、話しかける話題を増やしたいと自分で思っているメンバーがいるが、話しかけのタイミングが適切ではないので、そのタイミングを教えることをまず行なおう、というような描き方です。

 

ただ、実際にグループでトレーニングする時には、トレーニングする主体であるメンバーが、いかにそれを必要だと納得してトレーニングできるか、が重要になります。

トレーナー側が『このスキルのトレーニングをしましょう』と伝えて、メンバーをそれに沿わせるのではなく、トレーナー側が、そのスキルのトレーニングをするとメンバー自身にどのようなメリットがあるのか、を上手く伝え、メンバーがそれをやってみようと思えることが重要です。

 

私たちが街中のお店に行っても、店員が『私はあなたにはこの商品がよいと思うので、ぜひ購入しましょう』と伝えても、お客さんは買う気にならないですが、『この商品にはこんないい機能があるので、購入なさればお客様に役立ちますよ』と言われれば買う気になる、ということは経験したことがあるでしょう。

 

SSTでのリーダーがそのメンバーに必要だと考えるスキルのトレーニングを勧める時も、お店での“セールス”的な勧め方が非常に重要になります。

私が担当しているグループでは、私がコリーダー(共同リーダー)、もうひとりのスタッフがリーダー(主リーダー)をつとめています。

私は比較的SST経験が長いですが、リーダーのスタッフは、SSTの経験が比較的短いスタッフです。

リーダーのAさんは、トレーニングすべきとリーダー側が考える内容を、トレーニングする主体のメンバーにいかに“セールス”するか、について苦労しています。

 

リーダーをサポートする役割でもあるコリーダーの私は、その“セールス”の仕方を見本としてデモンストレーションしてリーダーに見せて教えることもありますが、Aさんはその習得途上の状態がしばらく続いています。それを習得できるために効果的に教えるのが難しいな、と私自身も思っています。

 

Aさんは自ら私とのミーティングを求めてくる姿勢があり、リーダーとして成長するためには、その点は非常によい点です。

一方で、SSTについての学問的知識や知恵を、書籍や研修会などからもっと得ると、その知見を元にしたトレーニングができるのにな、と思うこともあります。

また、コロナ流行下では難しいですが、もっと外の研修会に参加したり、他の施設のSSTを見学しに行ったりして、外の刺激を得てくると、リーダーとしてのスキルアップにつながるのにな、と思うこともあります。

 

Aさんはそれらを行なうことに対して二の足を踏んでいますが、そのように学問的知識を得る機会を持つことを勧めること、外のSSTに触れることを勧めること、についても、“私がよいと思うこと”ですが、いかにAさんに私が“セールス”できるかも課題だな、とこのコラムを書きながら感じました。

 

 

精神科デイケア“アミーゴ”スタッフ B


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